相続放棄とは|期限3か月・必要書類・費用をわかりやすく解説

公開: 2026年7月11日

相続放棄とは、家庭裁判所に申述して、プラスの財産も借金もすべて相続しないことです。 期限は「自分のために相続が開始したことを知った日から3か月」、費用は自分で手続きすれば収入印紙800円+戸籍代など数千円程度。 故人に借金がある・財産の全体像が分からないときの選択肢ですが、遺産に手を付けると放棄できなくなるため、この記事の「やってはいけないこと」を先に確認してください。

相続放棄とは——借金も財産も「初めから相続人でなかった」ことにする

相続の対応は3択です。受理されると撤回できないため、財産調査をしてから選びます。

選択肢内容向いているケース
単純承認財産も借金もすべて相続(何もしなければ自動的にこれ)財産が借金を上回る
相続放棄すべて相続しない。初めから相続人でなかった扱いに借金が多い・関わりたくない
限定承認財産の範囲内でのみ借金を引き継ぐ財産と借金のどちらが多いか不明(相続人全員での申述が必要で利用は少数)

期限は「知った日から3か月」

起算点は死亡日ではなく、「自分のために相続の開始があったことを知った日」です。通常は死亡を知った日ですが、先順位の相続人が放棄して自分に回ってきた場合は、それを知った日から3か月になります。 財産調査が間に合わないときは、家庭裁判所に期間伸長の申立てができます(3か月の期限内に)。 また、3か月を過ぎてしまった場合でも、「借金の存在を知り得なかった」などの事情によっては受理された例があります。あきらめる前に弁護士・司法書士に相談してください。

必要書類と費用

項目内容(2026年7月時点)
相続放棄申述書裁判所サイトから様式をダウンロード可
被相続人の住民票除票(または戸籍附票)最後の住所地の確認用
被相続人の死亡がわかる戸籍(除籍)謄本配偶者・子の場合はこれで足りることが多い
申述人の戸籍謄本続柄が遠い(親・兄弟姉妹・甥姪)ほど必要な戸籍が増える
収入印紙800円(申述人1人につき)
予納郵券(郵便切手)数百円〜千円程度(家庭裁判所により異なる)

自分でやれば実費数千円程度。専門家に依頼する場合の目安は、書類作成を司法書士に頼むと3万〜5万円程度、代理まで弁護士に頼むと5万〜10万円程度です。 提出先は故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、郵送でも申述できます。

手続きの流れ——申述から受理まで1〜2か月

  1. 戸籍等を集めて申述書を作成——財産調査(借金は信用情報機関への開示請求も有効)と並行して
  2. 家庭裁判所へ提出(窓口または郵送)
  3. 照会書に回答——提出から1〜2週間で裁判所から質問書が届くので、正直に記入して返送
  4. 受理通知書が届いて完了——債権者への証明には「相続放棄申述受理証明書」を別途取得して提示します

やってはいけないこと——遺産に手を付けると放棄できない

遺産を「処分」すると、相続を承認したとみなされ(法定単純承認)、放棄が認められなくなるおそれがあります。放棄を検討している間は次の行為を避けてください。

  • 故人の預金を引き出して使う・遺産で借金を返済する
  • 不動産や車の名義変更・売却、賃貸契約の解約返戻金の受領
  • 高価な形見分けを受け取る(一般的な記念品程度は通常問題ないとされます)

葬儀費用を遺産から支出することは、相当な範囲であれば単純承認に当たらないとした裁判例がありますが、判断が分かれ得る領域です。放棄の可能性があるなら、支出の前に専門家に確認するのが安全です。

知っておきたい注意点

  • 撤回できない——受理後に大きな財産が見つかっても原則戻せません。財産調査が先です
  • 借金は次順位の相続人へ移る——子全員が放棄すると親へ、親も放棄すると兄弟姉妹へ。トラブル防止のため、放棄したら次順位の親族に一報を
  • 生命保険金は受け取れる——受取人に指定されていれば、保険金は受取人固有の財産なので放棄しても受け取れます
  • お墓・仏壇は放棄しても引き継げる——祭祀財産は相続財産とは別枠です。相続放棄と墓じまいは独立に判断できます
  • 住んでいる家には保存義務が残る場合がある——放棄しても、その時点で占有している実家などは、次に管理すべき人へ引き継ぐまで保存義務が残ります(実家じまいの解説

よくある質問

Q. 相続人全員が放棄したら家はどうなる?
利害関係人の申立てで家庭裁判所が相続財産清算人を選任し、清算を経て最終的に国庫に帰属します。放棄した人が勝手に売却・処分することはできません。
Q. 3か月を過ぎたら絶対に放棄できない?
原則はできませんが、「借金の存在を知り得なかった」等の事情で起算点が後ろにずれ、受理された例があります。督促状が届いた時点で急いで弁護士に相談してください。
Q. 死亡保険金や遺族年金はもらえる?
受取人指定のある死亡保険金と、遺族の固有の権利である遺族年金は、相続放棄をしても受け取れます。
Q. 自分で手続きしても大丈夫?
配偶者や子で戸籍集めが簡単なら十分可能です(実費数千円)。続柄が遠い、期限が迫っている、債権者対応があるケースは専門家に依頼する価値があります。
Q. 未成年の子どもにも放棄させたい場合は?
親権者が代理しますが、親は相続して子だけ放棄させるような利益相反になる場合は、家庭裁判所での特別代理人の選任が必要です。

まとめ——「財産調査→3か月以内に判断」の順で

相続放棄は、①遺産に手を付けない ②財産と借金を調査する ③3か月以内に申述する——の順で動けば、自分でも完了できる手続きです。 死亡後の手続き全体の中での位置づけは期限順の一覧で確認してください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法律判断に代わるものではありません。受理の可否は個別事情によります。手数料・書類・運用は2026年7月時点の情報で、裁判所公式サイトに基づきます。