実家じまいの進め方と費用|売る・貸す・解体の選び方と放置するリスク
公開: 2026年7月11日
実家じまいとは、親が亡くなったり施設に入ったりして空き家になった実家を、片付けて手放すことです。 費用は遺品整理3万〜60万円程度、解体する場合は90万〜150万円程度(30坪木造の目安)が加わり、進め方は①親族の合意 → ②名義と財産の確認 → ③遺品整理・仏壇の供養 → ④相続登記 → ⑤売却・解体・賃貸の選択の5ステップ。 放置すると固定資産税が最大6倍になる制度改正もあり、「とりあえずそのまま」が一番高くつきます。
実家じまいとは——空き家になった実家を整理して手放すこと
総務省の住宅・土地統計調査によると、全国の空き家は900万2千戸・空き家率13.8%(2023年10月時点)で過去最多を更新しました。空き家の多くは相続した実家です。 実家じまいを始めるタイミングは「親が亡くなったとき」「親が施設に入居したとき」が典型ですが、名義や荷物の確認は親が元気なうちに始めるのが理想です。 登記名義が祖父母のままになっているケースでは、相続人の確定だけで数か月かかることがあります。
実家じまいの進め方5ステップ
- 親族で方針を合意する——実家は感情のこもった資産です。「売る・貸す・残す」の方針と費用分担を先に決めます。共有名義での相続は、将来の売却時に全員の同意が必要になるため避けるのが定石です
- 名義と財産を確認する——登記事項証明書(法務局)で名義を確認。死亡後の手続き全体は期限順の一覧を参照してください
- 遺品整理と仏壇の供養——貴重品・権利書・現金の捜索を先に。仏壇は菩提寺や仏壇店に依頼して閉眼供養(魂抜き)をしてから処分・移動します(仏壇の処分方法と費用)。お墓の整理(墓じまい)を検討しているなら、閉眼供養や親族調整が重なるためこの時期に同時に動くのが効率的です
- 相続登記をする(3年以内・義務)——2024年4月から義務化され、正当な理由のない放置は10万円以下の過料の対象。名義変更をしないと売却も解体もできません(相続登記義務化の解説)
- 売却・解体・賃貸を選ぶ——次章以降の費用と選択肢の比較で判断します
実家じまいの費用の目安
| 項目 | 目安(2026年7月時点) |
|---|---|
| 遺品整理・家財処分 | 3万〜60万円程度(1R数万円〜4LDK以上で20万〜60万円。物量で変動) |
| 仏壇の閉眼供養・処分 | お布施+処分費で数万円程度 |
| 解体(更地にする場合) | 木造は坪3万〜5万円程度=30坪で90万〜150万円程度 |
| 相続登記 | 登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)+司法書士報酬数万〜十数万円 |
| 売却時の諸費用 | 仲介手数料(売買価格の3%+6万円+消費税が上限)・印紙税・譲渡所得税 |
※解体費は立地(重機の進入可否)・構造で大きく変わります。自治体によっては老朽空き家の解体補助金があります。
放置するとどうなる——固定資産税が最大6倍に
「決められないから当面そのまま」が実は最も高くつきます。2023年12月施行の改正空家対策特別措置法で、倒壊の恐れなどがある「特定空家」に加え、その予備軍である「管理不全空き家」も、自治体の勧告を受けると住宅用地の税優遇が外れるようになりました。
- 固定資産税が最大6倍——住宅が建つ土地は固定資産税が1/6(200㎡以下の部分)に減額されていますが、勧告で特例が解除されると翌年度から本来の税額に戻ります(200㎡超の部分は3倍)
- 特定空家の命令違反は50万円以下の過料。それでも放置すれば行政代執行で解体され、費用は所有者に請求されます
- 維持コストは消えない——固定資産税・火災保険・草刈りや通気の管理(遠方なら交通費も)が、持ち続ける限り毎年かかります
手放し方の選択肢比較——売る・貸す・解体する
| 方法 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 仲介で売却 | 立地が良く時間をかけられる | 売れるまで数か月〜。市場価格で売れる |
| 業者買取 | 早く手放したい・遺品整理ごと任せたい・老朽が激しい | 仲介より2〜3割安。ただし現況のまま・短期間で確実 |
| 古家付き土地で売る | 解体費をかけたくない | 買主が解体前提だと価格交渉されやすい |
| 更地にして売る | 建物の傷みが激しい・土地の需要がある | 解体後は住宅用地特例が外れ固定資産税が上がる。売却まで長引くと逆効果 |
| 賃貸に出す | 手放したくない・賃貸需要がある立地 | リフォーム費と管理の手間。「実家じまい」の先送りになりがち |
| 空き家バンク・自治体相談 | 地方で買い手がつきにくい | 成約まで時間がかかる。無償譲渡に近いケースも |
判断の軸は「時間をかけて高く売るか、早く確実に手放すか」です。遠方に住んでいて管理に通えない場合や、家財が残ったままの場合は、買取系のサービスに査定だけ出して仲介価格と比べるのが現実的です。
使える税制の特例——3,000万円特別控除と相続登記
- 相続空き家の3,000万円特別控除——相続した実家を売って利益(譲渡所得)が出ても、要件を満たせば3,000万円まで非課税になります。主な要件は、昭和56年5月31日以前に建築された戸建て(マンション等の区分所有は対象外)/相続開始直前まで親が一人で住んでいた(老人ホーム入所の特例あり)/相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日までに売却/売却価格1億円以下、など。2024年以降の売却では、引き渡し後に買主が耐震改修または取り壊す場合も対象になりました。相続人が3人以上の場合は控除額2,000万円です。期限を1日でも過ぎると数百万円単位で手取りが変わるため、売却を選ぶなら早めに動く価値があります
- 取得費加算の特例——相続税を払った人が相続税の申告期限の翌日から3年以内に売ると、払った相続税の一部を経費にできます(3,000万円控除とは併用不可・有利な方を選択)
- 相続登記(義務)——取得を知った日から3年以内。登記しないと売却・解体・賃貸のどれにも進めません
※特例の適用可否は個別要件の確認が必要です。国税庁タックスアンサーNo.3306および税務署・税理士でご確認ください。
やってはいけない失敗5つ
- 貴重品を探す前に「丸ごと処分」を頼む——権利書・通帳・印鑑・現金・貴金属は家財の中に紛れています。業者に依頼する前に、まず家族で貴重品の捜索を
- 相見積もりを取らない——遺品整理も解体も業者間の価格差が大きく、1社即決は数十万円の損につながります。「無料回収」を強調する業者は不法投棄や作業後の高額請求のトラブル事例があるため、見積書の内訳と処分方法を確認してください
- 親族に相談せず家財や形見を処分する——モノの価値と思い出の価値は人によって違います。処分前に「欲しいものがないか」を一斉に確認するだけでトラブルの大半は防げます
- 売る前に更地にしてしまう——固定資産税が上がり、売れなければ塩漬けに。解体は「買い手・買取先が決まってから」が原則です
- 期限のある特例を逃す——3,000万円特別控除(相続開始3年後の年末まで)と相続登記(3年以内)は期限を過ぎると取り返せません。売却の意思があるなら早めに逆算を
近所・親戚への挨拶——タイミングと挨拶文の例文
実家じまいでは、①解体・引き渡しの前にご近所へ、②整理を終えたあとに親戚へ、の2回の挨拶をしておくと後日の行き違いを防げます。 ご近所へは手土産(タオルや菓子折りなど500〜1,000円程度、のし表書きは「御挨拶」)を持参し、解体する場合は工事業者の近隣挨拶に同行すると丁寧です。
例文①ご近所への挨拶(訪問時)
「このたび、〇〇(親の名前)の家を整理することになりました。長年大変お世話になり、ありがとうございました。〇月〇日頃から解体工事(お引き渡し)を予定しており、ご迷惑をおかけするかもしれません。お気づきの点がありましたら、こちらの連絡先までお知らせください。」
例文②親戚への挨拶状(整理後の報告はがき)
「謹啓 〇〇の候、皆様にはお健やかにお過ごしのことと存じます。さて、かねてよりご相談しておりました〇〇(地名)の実家につきまして、このたび整理を終え、〇月をもちまして手放すこととなりました。父母ともども長年お世話になりましたこと、家族一同心より御礼申し上げます。今後の連絡先は下記のとおりです。 謹白」
※文面は自由に書き換えてお使いください。仏壇やお墓を移した場合は、新しい供養先も書き添えると親戚からの問い合わせが減ります。
よくある質問
- Q. 親が存命のうちにできることは?
- 登記名義の確認(祖父母名義のままなら要注意)、家の中の貴重品・権利書の場所の共有、「最終的に家をどうしたいか」の意向確認の3つです。生前の話し合いが実家じまいの費用と期間を最も減らします。
- Q. 仏壇や位牌はどうすればいい?
- 菩提寺や仏壇店に閉眼供養(魂抜き)を依頼してから、処分・買い替え・移動します。お墓の整理も予定しているなら、墓じまいの閉眼供養と時期を合わせると親族調整が一度で済みます。
- Q. 兄弟で意見が割れたときは?
- 「とりあえず共有名義」は将来の売却に全員の同意が必要になり、こじれの元です。売却して代金を分ける換価分割を軸に、遺産分割協議で決着させるのが定石です。まとまらない場合は司法書士・弁護士へ。
- Q. 解体してから売るのと、そのまま売るのはどちらが得?
- 原則は「解体しないで先に査定」です。更地にすると固定資産税が上がり、解体費を価格に転嫁できるとも限りません。買主や買取業者が解体を前提に値付けするケースが多いためです。
- Q. お金がなくて実家じまいの費用が払えない場合は?
- ①遺品整理を自分たちで進めて業者費用を圧縮する、②買取可能な家財(貴金属・骨董・家電)で処分費と相殺する、③解体せず古家付きのまま売却・買取に出す、④売却代金や相続財産から支払う分担を遺産分割協議で決めておく——の順で検討してください。自治体の解体補助金が使える場合もあります。
- Q. 遠方に住んでいて動けない場合は?
- 遺品整理から売却まで一括対応する買取業者や、郵送・オンラインで完結する司法書士サービスを使えば、現地に行く回数を1〜2回に抑えられます。管理だけ続ける場合も自治体の空き家管理サービスの確認を。
まとめ——「そのまま」が一番高くつく
実家じまいは、親族の合意→名義の確認→遺品整理と供養→相続登記→売却・解体の順で進めれば、迷わず動けます。 固定資産税の優遇解除や3,000万円控除の期限を考えると、「決めないで持ち続ける」ことが最も費用のかかる選択です。 まずは登記名義の確認と、査定を1件取って相場を知ることから始めてください。お墓の整理を伴う場合は墓じまいの費用と流れもあわせてどうぞ。
最後にひとつ。育った家を手放すことに寂しさを感じるのは、ごく自然なことです。家の写真や間取り図をデータで残す、形見を一つだけ選ぶ、最後に家の前で家族写真を撮る——「何を残すか」を先に決めてから手放すと、気持ちの区切りがつきやすくなります。実家じまいは家を捨てる作業ではなく、家族の暮らしを次の形に引き継ぐ作業です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・法律上の助言に代わるものではありません。費用は地域・業者・物件の状態により異なります。金額・制度は2026年7月時点の情報で、統計は総務省「住宅・土地統計調査」、税制は国税庁タックスアンサーに基づきます。